研究指針

我々の研究室では主にX線を用いたタンパク質のX線1分子計測(DXT:Diffracted X-ray Tracking)を行っています。1分子マーカーとして金ナノ結晶をタンパク質にラベルし、白色X線で観測することにより、タンパク質1分子の動きをミリラジアンの空間精度、マイクロ秒の時間精度で計測することが可能になりました。この佐々木研究室オリジナルのX線1分子計測法を用いてタンパク質1分子の運動、構造と機能性について研究しています。サブナノ秒のポンプ・プローブ型時間分解X線回折法による金ナノ構造体の光物性ダイナミクスの研究なども行っています。

空間情報検出のための研究指針

原子サイズ以下の1分子内部運動計測精度の確立

1 Free-standing Probe(標識)型局部計測

私が考案した計測法の共通プローブはナノ結晶です。最近では量子ドットと呼ばれる可視域プローブも生命系で多く利用されていますが、その系も現状より結晶性を上げることでより高感度なプローブとなります。またナノ結晶の形状制御も魅力的な研究対象です。光源はシンクロトロン放射光、X線自由電子レーザー、高輝度電子線、高輝度中性子光源意外にも、可視領域の光源も視野に入れ動的な局部情報を得ることのできる計測手法を体系的に研究します。またナノ磁性粒子等の作製も行い、分子内運動を高精度計測するだけでなく、磁場中での分子内運動制御という新しい技術の確立も行います。XFEL利用時における位相情報応用としては、X線1分子追跡情報の3次元化や定在波法を併用した並進運動成分の同時計測を検討し、話題のコヒーレント回折法の対抗馬として発展させます。

2 Normal Probe(走査)型局部計測

私が確認したナノ結晶上にかかるX線放射圧は極めて微小な力場計測に利用できるので、走査型X線放射圧顕微鏡による構造計測を試みます。この極微小力場情報には多次元的な情報が付加されており、空間的時間的解析に多くの可能性を秘めています。また、XFEL等でX線プローブ自身がナノサイズ化されれば、走査プローブのみに照射して高精度計測が可能となり、サンプルへのダメージの問題を原理的に回避できる可能性もあります。

3 動的1分子シミュレーション法の確立

1分子計測で得られた結果の理論付けは必須です。

時間情報検出のための研究指針

1分子及び局部計測時でのマイクロ秒以下の時分割性確立

1 高速パルス利用と高感度検出系の開発

従来の高速回転シャッター等でps-nsレベルのパルス発生は可能となっていますので、そのレベルのプローブ強度で検出できる物理量を情報とするのが基本です。また、XFEL等の高速パルス発生が困難な場合は、特殊なデバイスによるパルス分割化や遅延化が必要になるでしょう。高感度検出としてはCCDカメラの究極的速度であるnsレベルでの利用を共同研究で進めています。

2 ポンプ&プローブ系における超高速1分子計測

ポンプ&プローブ系は超高速測定に向いている系ですが、やはり平均的な(多分子系)情報です。通常同期していると思われている分子群を1分子で計測し、通常のポンプ&プローブ系と比較することで、fsレベルの未知の領域の物性評価が可能になります。

画像(情報)処理技術のための研究指針

高速回折動画からの高感度情報抽出

多くの先端的動画技術は、一般的な解析ソフトでは対応できない特異画像特性を持っています。特に微かな情報(信号強度)を時分割的に追跡できるソフト開発の実現で、1次光照射強度を抑えた高精度動画計測が可能になります。
DXT解析技術の紹介

Research guidelines

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